妊娠中に乳がんが見つかった、産後に乳がんがみつかったという事例は、めったにありませんが、全くないわけではありません。
女性の多くが「乳がん検診は、産後いつから行っていいの?」「妊娠中に乳がん検診できるの?」といった疑問を持っているようです。出産前後の乳がん検診についてご紹介します。
もくじ
1. 妊娠したら、乳がん検診ができなくなるの?!
「乳がん検診は30歳代から始めるもの」というイメージを持つ女性が多いのですが、自治体などによる乳がん検診がおこなわれるのは、40歳代からがほとんど。
20~30歳代は、自己検診(セルフチェック)で良いとされています。
これは統計だと30歳代から乳がんにかかる人が増加し、40歳代でピークを迎えるためですが、「30歳代になる前に、乳がんにかかる人は少ない」というだけで、「30歳代になる前に、乳がんにかかることはありえない」という意味ではありません。
若くても妊娠して乳がん検診
確率が少ないとはいえ、10歳代で乳がんが見つかる女性もいるのです。
ですから、乳房の自己検診や乳がん検診などは何歳からと言わず、若いうちから習慣づけたほうがよいのですが、妊娠前後の2年近く、検診が中断してしまうことがあります。
「妊娠してから赤ちゃんを産んで、おっぱいをあげている期間は、乳がん検診ができない」と思い込んでいる女性が多いからです。
実際には、妊娠中でも行える乳がん検診があります。
「妊娠すると乳がん検診はできない」というイメージがありますが、まずは、かかりつけのお医者さまに相談してみましょう。
2. 妊娠すると、マンモグラフィーができなくなる?!
乳がんに不安を感じる女性の大きな味方が、X線で乳房を撮影できるマンモグラフィー。
開発されたのは1930年代のアメリカですが、最初はうまく撮影できなかったので、開発をやめてしまおうという話もあったそうです。
1990年代になると、日本でもマンモグラフィーによる検診が普及し始めます。
「視診や触診では発見できない、極小の乳がんを発見できる装置」というので、日本の女性たちにとっては衝撃のデビュー。たいへんな話題となりました。
ところが、マンモグラフィーのデビュー当初は、置いてある病院が少なすぎ。
マンモグラフィーの機械の値段が高価すぎて、購入できる病院がほとんどなかったのです。
何かのきっかけでマンモグラフィー検診を受けた女性は、「私はマンモグラフィーを受けたことがあるわよ」と人に自慢できるほどでした。
現在のように、全国どこでもマンモグラフィー検診が受けられるようになったのは、2000年代に入ってから。わりと最近のことなのです。
妊婦さんにはマンモグラフィーを使えない
このマンモグラフィーはX線(放射線)を使うので、妊娠中の女性が使うことはできません。
「妊娠すると乳がん検診ができなくなる」というイメージが強いのは、妊娠するとマンモグラフィーが使えなくなるからです。
しかし、乳がん検診の方法はマンモグラフィーひとつきりではありません。
妊娠したからといって乳がん検診が中断したり、とぎれてしまうことはないのです。
3. 妊娠中に乳がん検診を受けてもいい?
「そろそろ乳がん検診の時期だわ」と思っていたら、妊娠していることがわかった。
乳がん検診はどうしたらいいの?
それで悩んで、乳がん検診に行かないことにしてしまう女性が多いそうです。
妊娠中にできない乳がん検診はマンモグラフィーだけ。
他の乳がん検診はできますから、安心して検査を受けられます。
妊娠中はマンモグラフィー以外にも検診方法がある
妊娠中に病院などで乳がん検診を行う場合、マンモグラフィー検診ではなく、触診やエコー(超音波検査)を行うことになります。
セルフチェックによる自己検診は、妊娠中でも行ってよいものです。
乳房の様子がいつもと違うと感じたら、妊娠や乳がん検診の時期にこだわらず、お医者さまに相談してみましょう。その時々の体調にふさわしい方法で診断してもらえます。
妊娠中や授乳中は乳腺が発達しているので、同じ検診をしても普段より痛く感じたり、病院のスタッフも撮影が難しかったり、いつもどおりとはいかない場合があるそうです。
ですがこういった場合、「万が一のことを考えると、なにも検査しないより検査した方が良い」と考えるお医者さまが多いそうです。
4. 産後、授乳中の乳がん検診は?
授乳中は特に乳腺が発達するので、乳房の検査がやりにくかったり、乳がん検診を受けてもうまく撮影できなかったりします。
ですから、無理に乳がん検診をやらなくてもよいのでは、と考えるお医者さまと、念のためやった方が良いと考えるお医者さまと、だいたい半々だそうです。
母乳や乳房に異常があればお医者さまに相談する
しかし、母乳に血液が混ざっている、以前なかったしこりを見つけたなど、なにかいつもと違うことを見つけたら、授乳中であってもなくても、迷わずお医者さまに相談しましょう。
「授乳中は検査しにくいというから、相談するのは後日にしましょう」と自分で判断してしまうのは、よくありません。
まず病院に連絡して、どうするかはお医者さまに判断していただきましょう。
異常がなければ、乳がん検診は基本的に卒乳後でよいとされています。
ただし、自分の妊娠・出産の経過を知っているのは主治医です。
産後の乳がん検診をいつどんな風に行えばよいか、主治医にタイミングを相談するのがなによりではないでしょうか。
5. 妊娠中や産後でも、エコーをやってよい理由は?
マンモグラフィーもエコーも機械を使って行う検診なのに、妊娠中だとマンモグラフィーは不可。エコーだけが可能となります。
これは、それぞれの機械の仕組みが全く違うからです。
まず、マンモグラフィーはX線(放射線)を使って乳房を撮影する機械です。
「マンモグラフィーで検査します」と言われたら、「X線を使って乳房を撮影します」と言われたのと同じ意味になります。
妊婦さんがX線を浴びるのは、胎児への悪影響が心配されるので避けなければなりません。
エコー検査は音を使った検診方法なので安心して使える
一方、エコーは「超音波」という特別な音を対象物にあてて、音が反射した様子を画像化する医療機器です。
超音波は犬や猫には聞こえますが、人間の耳に聞こえない特別な音のこと。
エコーは有害な放射線ではなく「音」を身体にあてるので、妊娠中や産後でも安心して使えるのです。
6. 乳がん検診は怖いので、いつも行きたくない・・・
妊娠中でも、そうでなくても、乳がん検診に行かない。という女性もいます。
その理由の多くは「ガンが見つかると怖いから」です。
全く同じ理由で、男性でもガン検診に行かない人がいます。強い男性でも怖がるくらい、ガンは怖い病気なのです。
でも本当は、乳がん検診に行かないで、乳がんに気づかないまま過ごしているほうが、ずっと怖いことになります。
現代医療は妊娠中でもがん治療ができる!
乳がんの治療は日々進化しており、最近では妊娠中でも手術をしたり、抗がん剤治療を行うことができるそうです。
どんな手術をどんな風にするか、選択肢も増えています。
乳がんは早期発見が最善の治療方法
乳がんの一番の対策は「早く見つけること」。
乳がんを含め、病気の多くは早く見つければ治療が簡単に早く済みます。
見つかるのが遅いと、治療に時間がかかるし、やり方も複雑になり大きな負担になります。
乳がん検診にいかないと「もしかしたら乳がんかも」と、ずっと心配していなければなりません。
乳がんがないと確認できれば、毎日ずっと安心です。
健康診断は、自分の健康を確認して、安心して過ごすためのものです。
妊娠している時にも、していない時にも、乳がん検診に行きましょう。